mesokichi: 2011年8月アーカイブ

背の高い女性はそこまで言い…止まった 停止した 動かなくなった

瞳はルートをとらえ丸く開かれている

その空白の時間は一瞬とももっと長い時間とも思えた

 次の瞬間ルートは何故か彼女の腕の中にいた

 

「ディアナ…待て!」

ルートは切迫したラーナの叫びを聴いた…気がした

だがその声は、それを上回る女性のそれにかき消された

 

「キャー!!!!!カッワイイ!!!! 

 坊や、お名前は?ん?大丈夫よお姉さん怖くないからね! 

 あ、お姉さんはねぇディアナシュトラインって言うのよ 

 長いからディアナとかディアって呼んでね!」

 一息に続けられた言葉と突然の抱擁にルートはどうしていいかわからずに

そっとラーナを見た ルートの瞳は少し怯えていたかもしれない

 

「ディアナ…ディアナシュトライン!!」

 大きくはないが、存在感たっぷりのラーナの声が森に響いた

とたん、抱きつかれた時と同じく唐突にルートは自由になった

ディアナはあっさりまとわりつかせていた腕を解き

そっと地上にルートを降ろしてくれたのだ

 

 「あ、ごめんラーナついカッワイイ坊やが私を見つめてきたから

 早急に捕獲…じゃなくて抱きとめてあげないといけなくてね」

 「その癖…そろそろ改めてくれ…  

 あと、その少年はルート カルム族の子だよ」

「へぇカルムの子なのねぇ…って…  そう!そうなのよ!カルムの村にっ!!!」

そこでディアナは一息つき、続けた

 

 「カルムの村に、【グリーダナム】がいるみたいなの」

 「なっ?!【グリーダナム】だと…」

 

ディアナの話に驚愕した様子のラーナをきょとんと見ながら

そこまで大人しく彼ら二人の会話を聴いていたルートは不思議そうに尋ねた

 

「ねぇ、ねこさん…【グリーダナム】ってなに??」

少年の時は緩やかに流れていた
小さな村の小さな家で
小さな彼は小さな世界に生きていた


嵐は突然やってくる
そんなこと少年は知らなかった


木々から漏れるキラキラとした光を
受けながら彼【ルート】は森の中を歩いていた
先日の誕生日でルートはやっと両手の指すべてを
合わせた年になり一人で森に入ることを許されたのだ

少し前まで許されなかったことが許されるのは
一人前と認めて貰えたようなくすぐったい嬉しさがあった

さんざん両親と歩いた道だが、今日はその道すら
初めて歩くような気分だった

そう一人で森を歩くといっても行く場所などは
限られている道なき道をゆくわけではないのだ
村人が手入れしている道、木に付けられた目印など
この年になるまでに繰り返し覚えた道
それを間違うことなどない

ルートは、目印と道を確認しながら森の奥へと進んでいく
そして目的地である泉についた

いつも来ている場所
いつもの泉
なにも変わらない...
だけど、なにかが今日は違った
ルートは、首をひねって周りを確認した

そして見つけた違和感の正体
泉のほとりに黒と白の塊があった 否、塊ではない
ソレは「猫」だった
黒地に白いマスクと靴を履きしっぽの先も白く染まった猫

その猫は、じっとこちらを見つめ
「珍しいなカルム族の子供か?」
と、言った

(猫が喋った!)

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